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研究

陸域生態系動態モデルの開発
 

将来の気候変動は、森林生態系にどんな影響を及ぼすのでしょうか。例えば熱帯雨林の場合、乾燥が枯死を引き起こす鍵になりそうです。アマゾンでは、乾季の長期化や干ばつの頻度の増加が既に報告されています。一方ボルネオ島では乾季はありませんが、エルニーニョ現象による突発的な強い干ばつが樹木の枯死を引き起こしています。このとき、大きい木ほど枯死率が高く、この現象は世界中の森林で共通してみられると言われています。今後の気候変動が森林生態系に及ぼす影響を評価するため、熊谷さんと私は一本一本の木の生き様を表現する新しい陸域生態系動態モデルの開発を進めています(佐藤さんSEIB-DGVMに基づいています)。

土壌水分動態と生態水文学的研究
 

植物が利用可能な根圏土壌の水分動態、すなわち時間変化は、降水および蒸発散の熱源である太陽放射(正味放射量)の変動パターンに支配されます。そしてこの土壌水分動態は、植物生理やそれを通じた群落微気象、生物地球化学的循環と強く結びついています。そのため、植物を取り巻く様々な環境と水循環との関係を考える上で、土壌水分動態の理解は必要不可欠です。将来の気候変動が降水や蒸発散の変動パターンを変えた場合、土壌水分動態や植物生理がどうなるのか、興味深いところです。私は特に、高緯度の永久凍土地帯の森林(シベリア、アラスカ)における現象に関心を持っています。

渦相関法によるフラックス測定と技術の高度化

 

植物と大気との熱や物質のやりとりは、単位時間、単位面積あたりの輸送量であるフラックスの形で測定されます。このフラックスは、植物群落の中での様々なプロセスを反映していて、例えばCO2フラックスは生態系の光合成と呼吸を反映します。そのため、フラックスは植物の働きを知る上で大変重要です。渦相関法は、世界中で標準的に採用されているフラックス測定法です。この方法は、測定機器である超音波風速計と赤外線ガス分析計が正確に測定できていることを前提としてますが、どうしても機器依存の誤差や「クセ」は存在し、それにより測定における不確実性(もやもや)が生じます。私はこの「もやもや」を晴らすことを研究の一つの柱にしています。

植生と大気の相互作用の理解
 

植生と大気との物質交換は、大気の乱流によって輸送されます。そしてこの大気乱流の特性や風速の鉛直分布は植物群落の構造に左右されます。このことが、植生と大気との間の物質交換の「効率」を決定しているため、植物群落の中と外でどのような空気の流れのメカニズムや特性があるのか、大気の乱流構造がどうなっているのかを詳細に理解することが、植物と大気との相互作用を詳細に深く理解する上で非常に重要です。さらに、大気側から見たときの「群落構造」とは何なのか、植物群落を代表する「高さ」はどう決まっているのか、という視点も興味深いところです。

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